今年も準備万端!ブスのバレンタインヒストリー
今週のお題「バレンタインデー」
バレンタインデー。
想いを寄せる人に告白する日。
私は子供の頃から、毎年のように誰かしらにチョコレートをあげてきた。小学生の頃までは、バレンタインデーの目的が「好きな人にチョコを渡す」ことだったと思う。だから渡せたらハッピー。そこで終了。だって渡す以外に目的なんてなかったから。
でも年を取ってくると、やっぱり「告白」っていうメインイベントの存在に気づいてしまう。でもブスなシャイガールだった私は「付き合って」はもちろん、「私のこと好き?」とさえ言っていない。ただ好きだと伝えてチョコを押し付け、猛ダッシュで逃げるように走り去る。(走っているときに後ろから「ごめん、無理…」という男子の声が聞こえていたのは内緒。)
でも昨年のバレンタインは一味違ったのだ。
絶対に彼を射止めてやる!って結構前から鼻息荒く意気込んでた。
告白の言葉も毎日呪文のように唱えて練習したし、イメージトレーニングばっちし。なんなら付き合ってからの妄想までばっちし。
ただ自分の力だけでは少々不安もあったので、奮発してGODIVAで5000円以上するチョコレートを購入。高級チョコの力を借りれば完璧だ。私は絶対的勝利を確信する。
いよいよバレンタイン当日になり、好きな人にメールをした。
「授業後に正門近くに来れるー?」
あくまで自然に。チョコを渡すのがバレないように。自然さを心がけた結果、普段避けている「ら抜き言葉」を使ってしまったが、まあ致し方ないだろう。実を言うとこの一行を考えるのに数時間を費やした。ドキドキ。ブスはあまりの興奮に武者震いしていた。
返信は、来なかった。
そうなるともう、勝手に校門で待つしかない。(その頃の私にはストーカーという概念は無かった、ということにしておこう。)
告白の言葉を再び脳内で反芻した。最後の予行練習だ。それでも不安に駆られ、トートバッグの中に入っているチョコレートを見つめる。大丈夫、私にはGODIVAがある。こんなときのGODIVAはどんなお守りよりも効果があるようにと感じられた。
数時間位経ってからだろうか。
彼の姿が見えた。ださいセーター、ださいチノパン、ださいリュックサック。
いつもの彼だ、と思った。彼が校門に近づいた時、彼の後輩の女の子が彼を呼び止める。
予想外の展開に心の中は大パニック。だけど平静を装って「スマホゲームに熱中していて周りが見えてない人」のふりをした。いつも可愛いと感じていたはずのツムツムのキャラクターたちがやけに憎たらしい。
彼と女の子は長い間話をしていた。私は寒さとツムツムのやりすぎで指が攣りそうになりながら、その光景を見ている。
だけどそのうち居てもたっても居られなくなって、静かにその場を後にした。
携帯が鳴る。彼からだった。
「今メール見た。ごめん、彼女と話し込んでてさ!」
私が「もしもし」という間も無く、彼は楽しげにそう言う。彼女持ちだった。
何度目の失恋だろう?
ただ唯一救いなのは、ブスは失恋に慣れているということだ。慣れってすごい。
私は電話を切るとすぐにチョコレートを取り出し、それを頬張った。こんな時でもGODIVAは美味しい。そして彼のださい服装を思い出して、一人で笑った。(通りすがりの男子高校生は私のつけている骸骨ネックレスを笑っていた。)
告白の返事は二つしかない。
「YES」と「NO」である。
それだというのに今までの人生、告白する度に相手から「NO」だけをうまい具合に(?)引き出してきた私のテクニックを認めていただけたら嬉しい。なかなか出来ることじゃない、と自負している。
もしかしたら心優しい人が、今年のバレンタインもフられるのでは、と心配してくれるかもしれない。
でも、心配ご無用、今年も作戦はばっちりである。カンペキ。バッチグー。
続報を待て!