anne135のブログ

もうアラサーです。モテないアラサーの独り言。多分フィクションです。多分…。

幻のハチ公像

女子力、それは飲み会で率先して男子に食べ物を取り分ける能力。(諸説あり)

 
ただ、悲しいことに私にはこの能力がない。というか、外出は基本一人だから、女子力があるかどうかさえ証明する機会に恵まれない。スタートラインにすら立たせてもらってない。
 
 
そんな私は女子力をアップさせるために、東京の渋谷へと向かった。
「女子力は都心に集まる」と予想したからだ。
渋谷に着くとたくさんの人、人、人。
しかも派手で目立つ人が多い。髪は明るくて、パーマ。そして濃いめのリップ。ロリータファッションの人もちらほら見受けられた。
また、「渋谷の女性はハイヒールを履かなければならない」という法律があるのでは、と勘違いするくらい、みんなハイヒールを履いている。
 
その時私はというと、セーターにベージュのチノパン、薄汚れたスニーカーという服装であった。装備ゼロ。一瞬で何かに負けそうだ。
心を奮い立たせ、駅からいざ出発。
私の友人は以前、「渋谷では50m歩くのに3分はかかった」と言っていた。ナンパやスカウトがとにかく多いらしい。また、美容室のキャッチ(?)もいるそうである。
 
………おかしい。
私は何の障害物にも引っかからずに、もう300m以上は歩いている。「あれー?みんなー?私のこと見えてませんかー?」って心で何度も叫んだ。応答は、ない。
正直、ナンパやスカウトは無理でも、美容師がお店の宣伝位はしに来てくれると思っていた自分の認識の甘さを痛感する。
一応もっと歩き続けてはみたが、人はたくさんいるのに、悲しいくらいスイスイと前へ進めた。
 
本当に誰にも姿が見えていないようなので、流石に心が折れて、家に帰ろうと決めた。渋谷には女子力アップという目的で来たので、特に向かう場所もない。
 
ちょうどそんなとき、私に一筋の光が射した。
一人の背の高い男性が声をかけてきたのである。
 
“Hey, ♨☆×◯《%. ◉>⁂〆!”
 
外国人だった。私は必死に、「ノーイングリッシュ!ノーイングリッシュ!プリーズ!プリーズ!」という言葉を発する。それから、最初の“Hey”だけは聞き取れていたことに気づき、「ヘイ!」とだけ加えておいた。挨拶は大事だ。
でもその外国人には上手く伝わらず、呪文のような言葉を並べ続けられたため、「ソーリー」を連呼しつつ逃げた。
これが最後の一撃となり、私は駅へ戻る道を急いだ。エネルギーはもう残っていない。
 
帰りの電車の中で、渋谷での数十分を思い返す。そして、あの有名なハチ公像に行かなかったことに気がついた。私が渋谷の中で、唯一行きたいと思っていた場所であった。
 
また近いうちに渋谷を訪れることになりそうだ。