anne135のブログ

もうアラサーです。モテないアラサーの独り言。多分フィクションです。多分…。

初めて会った老婆に翻弄された人のお話。

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大学で授業を受け終え、昼食のために一人でファミレスに入る。

向かいの席で60代と見られる女性が独り言を言っていた。驚くくらいの大音量で。もやは独り言ではなく、一人叫びである。
内容はと言えば、「結婚しなくてもいいだろ!!」、「結婚しないのが悪いのか?!」、「結婚しないことに文句を言うな!」などなど。基本同じことの永遠ループ。若干言い方を変えただけ。
私は毎回バリエーションをつけて、ひたすら同じことを違う表現で言っている彼女にちょっぴり感心した。
私なんて、何でも超絶便利な魔法の用語、「やばい」を連呼して終える。プラスでも、マイナスでも、「やばい」。万能。やばい。

なぜそこまで結婚しないことにこだわっているのかは知らないが、まあ私には想像もつかないような事情がその女性にもあるのかもしれない。
周囲のテーブルの人はみな彼女に注目していた。店員さんもチラチラと横目で見ていた。

私は叫んでいる彼女が、他人には思えなかった。周囲から冷ややかな視線を浴びつつも、良く言えば自分を貫ぬき、悪く言えば周りを見ずに突っ走る、そんな彼女はまさに私そのものだ、と感じていた。

私が席でぼーっと座っていると、一人叫びの女性が席を立った。
周囲の人が、「やっと静かに食事ができる」とほっとしているのが分かる。私には彼女がこの場から去ることが若干寂しいという意味不明の感情がない事もなかったが、基本は周りと同じ気持ちだ。静かに食事がしたい。
グッバイ、シャウティング•ウーマン。

「サーーーーーーーーッッッ!!!!!!!!!!!!サーーーーーーーーッッッ!!!!」
私の耳元で突然響く声。
あの、一人叫びの女だった。
私の耳に最後の叫びを残し、彼女は去っていった。
隣の席に座る女性の驚いた顔が見えたが、一番驚いているのは私だ。
今まで散々、「結婚はしなくてもいい」的なことを言っていたのに、なぜ今回だけ「サーーーーーーッ!」なのか。
私は現実世界で「サーーーーーッ!」なんて言っている人を見たことがない。(福原愛選手は除く)

そして、なぜ私にそれを言ったのか。
別にこちらからアクションを起こしたわけではない。それなのに、ピンポイントでなぜ私なのか。なぜ私の耳元だったのか。

私が彼女を自分に似ている、と思ったように、彼女も私を同族と意識したのだろう。
一度でも彼女に親近感を覚えた自分を恨んだ。

特にどうすることも出来ない私は、あれこれ考えているうちにすっかり冷めてしまったパスタに手をつける。
美味しいのか美味しくないのか、味はよく分からなかった。


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