anne135のブログ

もうアラサーです。モテないアラサーの独り言。多分フィクションです。多分…。

眠れる森のブス

私には幼い頃から今に至るまで、たくさんのあだ名が付けられてきた。
「ブス(The ストレート)」、「ヤマンバ(寝癖全開の髪を見て言われた)」、「13点(100点満点中の私の顔面点数らしい)」、「パセリ(みんなに避けられるから)」などなど思い出せるだけでも多数ある。どれを見ても多かれ少なかれ、中傷されているような気がするが、まあ良いだろう。

そんな中、唯一キラキラと光り輝いているあだ名があった。
「Sleeping Beauty(=眠れる森の美女)」である。ちなみにこれはたった1人にしか呼ばれていない。当たり前である。Beautyではないことは明白だからだ。しかし彼は私をそう呼んだ。
その人はアジアから日本語を勉強するために日本に留学していたアジア人である。友人に、「Anneは変わってるから外国人との方が仲良くなれるんじゃない?」と言われたため、その友人の知り合いであるアジア人に会うことになった。
私はその人を心の中で「ニットキャップくん」と呼んでいた。理由は単純。彼が会うたびに黒いニットキャップを被っていたからだ。
彼は初対面から何故だか私をいたく気に入っていた。基本、ブスは初対面で嫌われることが多いため、とても新鮮。彼の美の概念はトチ狂っているのかもしれない、と失礼ながら思った。ニットキャップくんは私に毎日電話やメールをしてくれた。内容は本当にどうでも良いこと。「今日は何を食べた?」とか「どんな本が好き?」とか。

初めはとても嬉しかったのを覚えている。しかし時が経つにつれ、その頻繁な連絡が鬱陶しくなった。だから私は毎晩連絡を返さず、翌朝に「ごめん!寝てた」と返していた。とてもありがちなウソである。
それをニットキャップくんはすっかり信じ、いつの間にか私を「よく寝る人」として認識していた。そこから彼が私に付けたあだ名が、「Sleeping Beauty」だったわけである。初めて呼ばれた時には誰のことかわからなかったし、まさか自分のことだなんて全く思わなかった。でも呼ばれて悪い気はしない。

結局彼は、すぐに自分と同じ国出身の留学生の彼女を作った。それから頻繁な連絡はピタリと止み、それはそれで少し寂しく思っている自分がいた。ブスの青春は短い。

そんなことがあってから数ヶ月。彼から久しぶりにメールが来た。
そこには「眠れる森のブスへ」から始まる文章が綴られていた。なかなかうまいこと言えている。私は悲しみとともに、彼の日本語能力の上達を感じていた。
眠れる森のブス。正直私に合っていて、割と気に入っている。