anne135のブログ

もうアラサーです。モテないアラサーの独り言。多分フィクションです。多分…。

ブスで損をした話をしよう

2月上旬。受験シーズンである。
私自身が大学受験をした経験からも、家庭教師として受験生を教えたことがあることからも、割とこの時期はソワソワしてしまう。

そんな私がソワソワを抑えきれなくなり、何日か前に図書館へ行った。そこではたくさんの受験生と思われる生徒たちが最後の追い込みをしている。志望校の過去問、通称赤本を見ながら必死に問題を解いている。(なぜ過去問は赤いのだろう?大分気になっているから、誰か正解を教えて欲しい。赤い血にまみれるほど勉強しろという暗示なのか?そうではないと信じたい)

そんな中、私も特に読む気もない参考書を開いてみる。隣の席も前の席も男子受験生だ。
斜め前は中学三年生位の女の子。制服のシャツのボタンを3つ目まで開け、ミニスカートを履いている。その女の子はかつてのまだ中学生だった頃の自分を思い出させ、ついニヤニヤとしてしまった。その子と中学生時代の私の違いといえば、私はダサい制服のボタンを一番上まで締めていたこと。そして校則を守って膝丈のスカートを履いていたこと。私服はタートルネックのみだったこと。外出時にはオシャレと思って買った、でかい骸骨のネックレスをつけていたこと。それだけである。たったそれだけ。
友達から「ブス」というストレートにも程があるあだ名を与えられたあの頃。他校の男子がこっちを見ていると思ったら、骸骨のネックレスの写メを勝手に撮られたあの頃。急に懐かしさが蘇った。

そんな回想をしていたときだった。
隣の男子高校生が消しゴムを落とし、床に跳ねた消しゴムは私の足にぶつかった。
「チャンス!」私は心の中でほくそ笑む。実は、話しかけるタイミングを狙っていたためである。ただ懐かしい思い出が私のテンションをおかしくしていたのだ。
消しゴムを拾った私は、「もうすぐ大学受験ですか?ちゃんと勉強してて偉いですね」と上から目線なのか何なのかよく分からない発言をした。
相手は、ただただ困っていた。私から必死に目を逸らしていた。大丈夫。私はブスだけどメデューサじゃない。私を見ても石にはならない。
「ごめんなさい、急に話しかけちゃって!」場を和ませようともう一声かけてみたが、彼は無言だった。そして、今までの出来事を全て忘れたかのように静かに勉強に戻った。

取り残された私が出来ること、それは途方にくれることだけである。
気まずい空間と私の手の中に残る、男子高校生が落とした消しゴム。
仲良くなれなかったばかりか、消しゴム泥棒のようになってしまっていた。
懐かしい思い出たちが再び、頭をよぎる。私はそっと消しゴムを彼の机に起き、今もなおつけていた骸骨のネックレスを握りしめて帰路に着いた。